あなたの会社でも、原価計算に手間がかかりすぎていたり、コストが正確に把握できないと感じていませんか?
特に、複雑な業務や多岐にわたる活動がある場合、従来の原価計算方法では限界があります。
そこで注目されているのが「 活動基準原価計算 ( ABC : Activity-based costing)」です。
この記事では、ABCを導入することで得られるメリットや具体的な導入手順、さらに導入時の課題とその解決策について詳しく解説します。
ABCを活用することで、コスト管理が精緻化され、効率的な経営が実現できるでしょう。
この記事はこんな人向け
- コスト管理に悩んでいる経営者や管理者
- 業績改善を図りたいビジネスリーダー
- ABC導入を検討している経営企画担当者
本記事に書かれていること
- 活動基準原価計算(ABC)の基本概念
- ABCの導入ステップと成功事例
- ABCを導入する際の課題とその解決策
監修者情報
一般社団法人 北海道中小企業診断士協会所属 大平 徳臣
知好楽経営相談所 代表。経済産業大臣登録 中小企業診断士。経営学修士(MBA)。宅地建物取引士。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
MBAでは、経営戦略やマーケティング、組織論、会計、ファイナンス、資本政策を学び、企業の競争優位を築くための知識を体系的に習得。中小企業診断士として創業支援を行った食品小売事業者では、不動産立地選定、ターゲット市場調査、商品コンセプト、PR戦略、事業計画書作成の支援を行い、1年9ケ月で黒字化に成功。安定したリピート顧客売上の基、SNS経由での認知獲得の支援を行っている。
活動基準原価計算とは何か?
活動基準原価計算(ABC:Activity-Based Costing)とは、企業の活動ごとに発生するコストをより正確に把握する手法です。
従来の原価計算では、直接材料費や労務費といった単純なコスト要素のみが考慮されるため、製品ごとのコストが曖昧になりがちです。
一方、ABCでは、企業のあらゆる活動を分析し、その活動が発生させるコスト(コストドライバー)を細かく追跡します。
これにより、非効率な活動や利益を圧迫している要素を見つけ出し、業務改善に活用できます!
活動基準原価計算の基本構造
ABCは、企業がどの活動にどれだけのコストをかけているかを明確にします。
その際、「活動」 と 「コストドライバー」 という2つの要素が重要です。
- 活動:製品やサービスを提供するために必要な具体的な業務や作業のことです。例えば、製品を製造するための工程や顧客対応などが該当します。
- コストドライバー:活動に関連して発生するコストの要因です。たとえば、製造業の場合、「作業時間」や「機械の稼働時間」がコストドライバーとして設定されることが多いです。
これらの要素を正確に把握することで、企業は利益率が低い製品やサービスを見極め、適切な改善策を講じることができます。
ABC導入の必要性
ABCの導入が必要になるのは、企業が以下のような問題に直面しているときです。
- コストの見える化ができていない。
- 利益の低い製品やサービスが何か把握できない。
- 非効率な活動が見つからない。
これらの課題に対し、ABCはより細かなコスト管理を可能にし、経営判断の精度を高める役割を果たします!
活動基準原価計算の利点
ABCは企業に対して多くの利点をもたらします。
- リアルタイムのコスト管理:各活動のコストをリアルタイムで把握することで、迅速な意思決定が可能になります。
- 戦略的なコスト削減:ABCを導入すると、コスト削減が無駄にではなく、効果的に行われます。
- 業務改善の基盤:非効率な活動を減らし、利益を最大化するための具体的な行動計画が立てられます。
活動基準原価計算の導入ステップ
ABCを導入するには、以下のステップに従って実行することが重要です。
ステップ1:活動の洗い出し
最初に、会社の中で行われているすべての「活動」をリストアップします。
これは製造、販売、物流、管理など、企業内のすべてのプロセスを含めます。
この段階では、どの業務が重要で、どの業務が無駄かを正確に見極めるため、詳細な分析が必要です。
ポイント:チーム内のコミュニケーションが重要
活動の洗い出しには、全社的な協力が不可欠です!各部門の担当者と密に連携し、正確な活動を記録しましょう。
ステップ2:コストドライバーの特定
次に、各活動に対してコストドライバーを設定します。
コストドライバーとは、活動に関連して発生する具体的なコストのことです。
例えば、「製造時間」や「配送回数」など、活動のコストを引き起こす要因が該当します。
コストドライバーの選定ポイント
正しいコストドライバーを選定することが、ABC導入の成功を左右します。
単なる作業量ではなく、その活動が実際にどれだけのコストを生み出しているかを正確に把握することが大切です。
ステップ3:コスト配分と分析
最後に、活動ごとに発生したコストを集計し、どの活動がどのくらいのコストを消費しているのかを把握します。
このデータを基に、非効率な部分を特定し、改善策を検討します。
リアルタイムでのデータ活用
ABCを導入する際、リアルタイムでのデータ分析を行うと、より素早く対策を打つことが可能になります。
例えば、活動ごとのコストが一時的に上昇した場合、その原因をすぐに特定して改善できます。
活動基準原価計算がもたらすメリット
ABCを導入することで、企業は多くのメリットを享受できます。特に、以下の点が注目されています!
正確なコスト把握
従来の原価計算方法では見逃されていた間接費用も含め、より正確なコスト構造を把握できるため、適切な価格設定やコスト削減が可能です。
価格設定の最適化
ABCを導入することで、製品やサービスごとの利益構造を明確にでき、適正な価格設定が実現します。
これにより、無駄な値引きや、逆に過剰な価格設定を回避できるのです!
非効率な活動の特定
各活動ごとのコストが明確になるため、無駄な業務やコストを削減するチャンスが生まれます。
例えば、製品の製造プロセスを見直し、余分な工程を削減することができるでしょう。
活動分析による効率化の事例
例えば、ある企業では、製品の製造過程で発生する多重チェックがコストを引き上げていることが判明し、プロセスを自動化することで大幅なコスト削減を達成しました!
利益率の向上
コスト削減と効率化が進むことで、製品やサービスの利益率が向上し、競争力が強化されます!
ABCを活用することで、企業は利益を最適化し、持続的な成長を実現できます。
活動基準原価計算の活用事例
ABCを実際に導入して成功した企業の事例をいくつか紹介します。
製造業での事例
ある製造業の企業では、ABCを導入することで各製造ラインのコストを正確に把握できました。
その結果、利益率の低い製品を特定し、製造工程を見直すことで、年間コストを10%削減することができました。
製造ラインごとの詳細なコスト管理
特に、製品ごとの利益率を細かく分解し、利益を生み出しにくいラインを廃止することで、利益向上が実現しました!
サービス業での事例
サービス業においても、顧客対応やサポート業務にかかるコストをABCで分析したところ、一部のサービスが非効率であることが判明しました。
これにより、無駄な工程を削減し、サービスの質を向上させることができました。
活動基準原価計算を導入する際の課題
ABC導入には多くのメリットがありますが、いくつかの課題も存在します。
これらを事前に把握し、対策を講じることで、スムーズな導入が可能となります。
初期導入コスト
ABCの導入には、システムや人員のトレーニングにかかる初期費用が発生します。
しかし、長期的にはその費用を大きく上回る効果を得られるため、早期に投資する価値があります。
初期費用とROIのバランス
ABCを導入する際には、初期投資とその回収期間をしっかりと計算しておくことが重要です。初期導入コストが大きくても、長期的な利益増加につながるケースがほとんどです。
社員の理解と協力
新しい原価計算手法を導入する際、社員の理解を得ることが重要です。
特に、現場の従業員がABCを正確に運用できるよう、十分な説明とトレーニングが必要です。
従業員のトレーニングのポイント
ABCの導入に際しては、全社員がそのメリットを理解し、自ら運用できるように教育を行うことが不可欠です。特に管理職には、正しい運用を促すリーダーシップが求められます!
活動基準原価計算導入における成功のカギ
ABCを成功裏に導入するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
経営層のサポート
ABCの導入は、経営層のサポートが不可欠です。
トップダウンでの推進が進めば、現場の協力も得やすくなります!
経営層の関与が必要な理由
ABC導入の成功は、現場だけでは達成できません。経営層が積極的に関与し、予算の確保やリソースの配分を行うことで、全社的な協力が得られるのです。
適切なコストドライバーの設定
コストドライバーの設定は、ABC導入の成功において非常に重要です。
適切なコストドライバーを選定することで、正確なデータが得られ、コスト削減のチャンスが広がります。
まとめ
活動基準原価計算(ABC)は、企業がコスト構造をより精緻に理解し、効率的な経営を実現するための強力なツールです。
この記事では、ABCの基本から導入ステップ、成功事例、導入時の課題について詳しく解説しました。
ABCを活用することで、企業は非効率な活動を削減し、利益率を向上させることができます。
ぜひ、この記事を参考に、ABC導入を検討してみてください!